広告運用を広告代理店へ依頼する際、契約締結前に実際に誰が運用を担当するのか明確にできていますか?
広告のパフォーマンスは営業等の窓口担当ではなく、運用担当者のスキルに強く依存するため、その担当者が事前に明確になっていないとすればリスク大です!
以降、上記の理由について詳細に解説してまいります。
なお、この記事では全体を通して以下のようなことを述べています。
この記事の概要
- 広告運用のパフォーマンスは代理店ではなく運用担当者次第
- 代理店との広告運用契約前に運用担当者をコミットしてもらおう
- 広告主は運用担当者のスキルや現在の状況をちゃんと確認しよう
- 契約締結前に担当者を明示しない代理店には、3種類の黒い思惑がある
- 代理店単位ではなく、運用者単位で代行依頼するという選択肢もある
以下、順に見て行きましょう!
この記事の目次(クリックで遷移)
広告運用パフォーマンスは運用担当者次第
運用担当者が変われば広告のパフォーマンスも大きく変わります。
つまり、「良い代理店」を選ぶという考え方は適切ではなく、「良い担当者」を選ぶという観点が重要です。
これに対し、代理店側は「うちは社内情報共有や内部勉強会をしっかりしているので、担当者による優劣は発生しないようにしています」という所も多いでしょう。
ただし、これは単なる理想論であり半分ウソです。
仮に社内情報共有や勉強会が行われていたとしても、担当者毎の理解度に応じた運用パフォーマンスの優劣は確実に存在します。
また、そもそも情報共有や勉強会が行われていれば良いほうですが、定常業務に追われるあまり、そういった事に手を出せていない代理店の方が多いのが実情です。
社内には運用の熟練者から、数カ月前に運用を始めたばかりの1年生プレーヤーまで様々存在しています。
そもそも、熟練者が存在していない代理店も多数あります。
そのため代理店と契約を結ぶ際には、「契約前に具体的な運用担当者の情報を教えてほしい」との旨を代理店側に明確に伝えてください。
また、この確認には「代理店側に適当な運用担当者を割り当てられないための牽制」という重要な効果もあるため、必ず運用契約の締結前に実施すべきです。
同じ手数料を払って運用代行してもらうのであれば、より良い担当者を割り当てて欲しいですよね。
なお、ここで確認すべき担当者の情報というのは個人情報に該当するような内容ではなく、運用スキルや実績に関する以下のような情報です。
運用担当者について最低限確認すべき情報
- 過去の運用業務経歴
- 他に何社程度掛け持ちしているか
- 周辺スキルの有無
- 実際に対面で話をしてみる
それぞれ、解説してまいります。
確認項目①:過去の運用業務経歴
広告運用担当者もピンキリですので、まずはその担当者の運用業務経歴を確認することで、ある程度の経験と実績を持った人なのかどうかを判断しましょう。
確認すべきなのは以下のような項目です。
確認すべき担当者の経緯
- 具体的な改善実績
- 運用業務経験年数
- これまでの取扱高
- 経験のある商品ジャンル
具体的な改善実績
ノウハウを持った人物であれば当然改善経験も持っていますので、ここではその改善実績について聞き出してください。
代理店側としては運用担当者の改善実績についてある程度底上げして話をするケースもあります。
そのため改善の概要について聞いた後は、更に具体的な以下のような内容について深堀して聞きつつ、担当者のスキルを見極めてください。
運用担当者について深掘りして聞くべき事
- パフォーマンス改善できた理由
- 運用時に留意した事
- 運用上難しかった事
- これをやれば更に改善できたと考えられる事
運用業務経験年数
経験年数は長い方が望ましいというより、極端に短い人は避けるべきという観点が良いです。
私であれば、最低限1.5年以上の経験は欲しいと思います。
運用パフォーマンスは必ずしも経験年数に比例するという訳ではありません。
とは言え、経験を積んだ方が運用力が高まっていくというのも事実です。
そのため、念のためここで運用経験年数についても確認しておいてください。
これまでの取扱高
これも経験年数と同様、極端に取扱高が低い人は避けるべきという観点が良いです。
個人的には、最低でも累計取扱高が3,000万円以上は欲しいところです。
広告運用をする際には過去の広告配信実績を分析し、必要に応じて改善のための調整を加えていきます。
しかし広告費が少ないアカウントは調整判断のベースとなる配信実績データも少なくなるため、改善のための調整を加える余地や頻度も広告費の多いアカウントより少なくなる傾向があります。
また、代理店社内でもエース級の人材であれば、取扱規模の大きい案件を任されているはずです。
そのため、経験年数と合わせて累計取扱高も確認するようにしてください。
経験のある商品ジャンル
同一ジャンルの広告ばかり長期間運用していても幅広いノウハウは身につきません。
異なるジャンルの広告を運用することで、各種広告配信手法毎の特性やノウハウについて気付くことが多いです。
経験のある商品ジャンルは必ずしも自社商品ジャンルと一致している必要はないと思いますが、その人の経験値を知るという意味で確認するのが望ましいです。
確認項目②:他に何社程度掛け持ちしているか
これ、結構重要です。
代理店によっては運用メンバー1人につき、10を超えるようなアカウントを担当させるようなところも存在します。
個人的には掛け持ちは多くとも5社以内程度に留めておきたいところですが、私の聞いたことのあるケースで最も多かったのは、何と80越えでした。
こうなってしまうと、もう運用というより単なる予算管理しかできなくなってしまいます。
単なる予算管理というのは、具体的には広告の実績に応じて入札単価をコントロールするといったようなことは一切せず、キャンペーンの予算キャップで強制的に毎日配信を止めることを繰り返し、予算内に着地させるというような運用です。
これをやってしまうと、もう運用パフォーマンスはガタ落ちの一途をたどります。(正確には、ガタ落ちした状態をキープし続けます)
手数料を払って運用を外注しておきながら、そんな運用をされたんじゃたまったもんじゃないですよね。
代理店は一番正直に言いたがらない確認項目ですが、必ず確認するようにしましょう。
確認項目③:周辺スキルの有無
近年、広告配信手法や計測手法の発展と共に、良い広告運用をするためには各種周辺スキルを持っていることが必要になってきています。
具体的に重要となる周辺スキルとしては次のようなものが挙げられます。
広告運用で重要な周辺スキル
- アクセス解析
- タグマネジメント
- Java Script
- SEO
アクセス解析ツール
具体的にはGoogleAnalytics等のアクセス解析ツールを用いて、サイトの状況について判断&改善できるスキルの事です。
あくまで一例ですが、アクセス解析ツールは広告配信結果の判断にも活用できますし、GoogleAnalyticsと広告アカウントを連携し、GoogleAnalyticsから特定のユーザーリストをGoogle広告アカウントへ連携してマーケティングに活用すること等もできます。
最近、GoogleAnalyticsと広告アカウントを接続することで可能となる機能が増えてきていますので、こういった知識を十分に持っておくことは広告運用をする上でも大いに役立ちます。
タグマネジメント
広告運用とは広告配信実績を元に各種調整を加えて、運用パフォーマンスを改善することです。
そのため、調整判断のベースとなるCVとしてどんな数値を取得すべきであり、実際に取得できるかという視点は非常に重要です。
GoogleTagManager等のタグマネジメントツールを駆使すれば、サンクスページにCVタグを置いておいて「サンクスページ読み込み数=CV数」としてカウントする以外にも、サイト内滞在時間、閲覧ページ数、クリックしたボタン、画面スクロール量などに応じてCVを発生させるような実装も比較的簡単にできます。
こういったCVをマイクロCVとして活用し、通常のCVと合わせて計測&運用に活用することでパフォーマンスを向上させることも可能ですし、アクセス解析ツールに連携することでより詳細な効果計測が可能となったりもします。
ただし、タグマネージャーの機能に精通していないと、そもそも運用担当者側からこういった提案自体が出てきません。
タグマネジメントと広告運用の親和性は非常に高いのです。
Java Script
Java Scriptなんてプログラミング言語の話は広告運用に関係ないと思いますか?
いいえ、そんなことはありません。
そもそも広告運用で使用するCVタグやリターゲティングタグ等はJava Scriptで記述されています。
Java Scriptに関する知識を持っていれば、これらタグ内容を適切に読み解いてカスタマイズしたり、GoogleAnalyticsでサイト内のユーザー行動を計測するために活用することなどが可能となります。
SEO
SEOとWEB広告は対局の位置付けで語られることも多いですが、両方ともWEBマーケティング領域の施策です。
WEB広告と直接の関係性はないのですが、自然検索結果で上位表示されるためのロジックやノウハウを知っていると、自然検索結果画面からユーザーの検索意図を判断できるようになります。
この検索意図に応じた訴求をリスティング広告の広告文やコンテンツに盛り込むことで、広告効果(CTRやCVR)の改善が期待できるのです。
WEB広告は奥深いですね。
確認項目④:実際に対面で話をしてみる
これら前述の情報は代理店の営業担当などから聞くのではなく、実際の運用担当者に対面で聞くのがベストです。
本人に聞いた方が詳細な話を聞き出すことが可能ですし、何よりその人物の人となりについて知ることができます。
能力上問題なかったとしても、仕事を進める上で人間性や説明スキルに問題があると厄介な問題が出てくるケースもありますので注意しましょう。
代理店が事前に担当者を明確にできない理由
これまで色々書いてきましたが、そもそも代理店が広告主との運用契約前に運用担当者を明確にしてくれないケースは非常に多いです。
なお、明確にできないケースとしては以下が挙げられます。
運用担当者を明確にできない主なケース
- その代理店側に、契約締結前に担当者を決めるという文化自体が存在していない
- 実際の担当者は決まっているが、契約締結前に担当者を出すことで締結に至らなくなるリスクが発生する事を避けたい
- 実際の広告運用はゼネコン構造の下請け業者に流すため、担当者を事前コミットできない
私は、下に行くほど望ましくない状態であると考えます。
それぞれ、解説してまいります。
契約前に運用担当者を決める文化が存在していないケース
代理店の中には案件の正式受注が決まってから、ようやく具体的な担当者などについて検討を始めるところも多数存在します。
もし、そのような代理店に遭遇した場合には、運用を依頼する側から明確に「契約前に具体的な担当者の情報を教えてほしい」との旨を伝えてください。
どうしても代理店が渋るようであれば、何か問題があるはずです。
明確な理由がない場合は、他代理店での運用を検討する旨も伝えてでも担当決めを促すべきです。
これには、契約前に担当者を決めてもらうことで、スキルの低い担当者を割り当てられないようにするという効果もあります。
担当者を明示することで契約締結に至らないリスクを避けたいケース
代理店の社内では既に担当者が決まっていたとしても、その担当者の経験やスキルが不十分である場合、契約前に運用担当者を前面に出さない場合があります。
これは、実際の運用担当者と広告主が対面することで、広告主が心変わりしてしまうことを防ぐために代理店がとりがちな対応です。
しかし、この対応をされることは広告主にとってリスクしかありません。
結婚して初めて婚約者の顔を知るなんて事がありえないのと同様に、広告運用の契約を締結した後に運用担当者を知るなんて事も、本来はあってはならないはずです。
なるべくスキルの高い担当者を割り当ててもらうためにも、広告主側から遠慮なく代理店に対して運用担当者の情報を事前に提示してもらうようプッシュしましょう。
実際の広告運用は下請業者に発注しているケース
建築業界のゼネコンと同様、WEB広告業界にもゼネコンのような組織構造が存在します。
具体的に言うと、案件受注は上位階層に位置付ける代理店が引き受け、実際の広告運用はその下請け代理店に丸投げするようなケースです。
この場合、仮に広告主の手数料が20%だとすると、上位階層の代理店が7%、下請けが13%程度の手数料をもらい受けるような構造となります。
上位階層の代理店は広告主と対面しながら案件を進めますが、実際の運用を担当している下請けの代理店が打ち合わせに出てくるようなケース事はまずありません。
こうなってしまうと以下のような問題が生まれてきます。
ゼネコン構造の代理店の問題点
- 対面する上位階層の代理店に要望を伝えても実際の運用に反映されづらい
- 下請け代理店が得る手数料が少ないため運用をあまり頑張らない
- 実際の運用者のスキルが低くても一切関知できない
正直、上位階層の代理店の存在価値はほとんどありません。
であれば、最初から下請け代理店に対して手数料20%で運用を頼んだ方がお互いWIN/WINになります。
規模の大きい代理店が中小規模の予算の案件を担当すると、こういった対応になる事が多々あります。
こうならないためには、自身の予算規模に合った案件直受け系代理店に依頼することが重要です。
良い広告運用担当者に巡り合えない理由
WEB広告業界は人の移り変わりが激しく、人材が非常に流動的です。
仮に良い担当者に巡り当たったとしても、1年後にもその担当者が同じ代理店に居続ける保証はどこにもありません。
代理店に在籍し続けたとしてもジョブローテーションとの名の元、あっという間に別案件の担当へ異動してしまったりもします。
代理店内では広告運用担当者の人材不足が深刻
広告代理店は広告運用のプロ集団なので運用経験豊富な人材が揃っている・・・なんてのは幻想の理想論です。
以下、ネット広告代理店の平均勤続年数をご覧ください。
参考:ネット広告代理店 平均勤続年数のランキング 1~10位
これを見る限り、業界全体の平均勤続年数は4年程度といったところでしょうか。
平均勤続年数が2年未満の会社なんてのも意外とあります。
それ程までに人材が流動的なのです。
良い運用担当者は高額案件を担当する
パフォーマンスの高い担当者は当然、予算規模の大きな案件を任されます。
裏を返せば、予算規模の小さな案件に対してはあまりパフォーマンスの高くない担当者が割り当てられるということです。
ここで言う予算規模の大きな案件は絶対的な数値として○○万円以上の案件等と示せるものではありません。
あくまで各代理店が扱う広告案件の中で、その案件の予算規模が相対的に大きいものであれば規模の大きい案件との扱いとなり、良い担当者が割り当てられる可能性は少々上がると思います。
つまり、予算規模はそれほど大きくないのに下手に規模の大きい代理店に頼んでしまうとどうなるか、、、今までの話から想像はつきますよね。
どうすればよい広告運用担当者に巡り合えるのか
「良い代理店を探す」のではなく、「良い担当者を探す」という行動が重要です。
また、代理店に対して運用を依頼すると、その担当者が転職した際に運用担当者も変更となってしまいます。
これはかなり大きなリスクです。
そのため、運用スキルのあるフリーの運用者に対して広告運用を直接依頼するというのも一つの手段です。
代理店単位ではなく、最初から人単位で依頼してしまうということですね。
スキルを持ったフリーの運用者であれば、一人であっても余裕を持って案件管理することが可能です。
その人に直接依頼できるのであれば、下手な運用をされてしまうリスクを最小限に抑えることが可能です。
今はランサーズやクラウドワークスといったクラウドソーシングサービスも存在するので、こういった選択肢も持っておくと良いと思います。
ちなみに、私も個人として広告運用を請け負っております。
まとめ
結局のところ、私が言いたかったのは代理店の営業担当等の窓口ではなく、実際の運用担当者をしっかりと見極めて運用を依頼することが重要ということです。
また、実際の広告代理店の選定にあたっては選んではいけないNGポイントも存在します。
詳しくは以下コンテンツにまとめていますので、合わせてご確認ください。
ここまで読んでいて、運用担当者の見極めができれば苦労はないと思われた方も多いでしょうか。
そういった場合は、個別にご相談いただければ代理店選定等に関する外部アドバイスやコンサルティングを当方で実施させていただくことも可能です。
もし気になる場合は、以下の問い合わせ先からお問い合わせください。
せっかくお金を払って代理店に広告運用を依頼するのであれば、費用対効果が高く運用を回せるようにしたいですよね。
そのためには、広告運用スタートまでの進め方が非常に重要なのです。